鼻副鼻腔疾患・鼻アレルギー研究室
主に慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔腫瘍にたいする診療、研究を行っています。
また鼻内より内視鏡を用いた頭蓋底手術を脳神経外科と合同で行っています。
診療従事
水曜日に専門外来を行っています。外来治療としては、アレルギー性鼻炎に対するアルゴンプラズマ下鼻甲介粘膜焼灼術やハウスダスト、スギ花粉に対する舌下免疫療法を行っています。入院においては、アレルギー性鼻炎に対する、粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術、慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下副鼻腔手術を行っています。また、鼻副鼻腔腫瘍や眼窩骨折に対し、鼻内からアプローチが可能であればできるだけ鼻内内視鏡を用いた手術を行っています。さらに2018年からは脳神経外科と頭蓋底チームを立ち上げ鼻、副鼻腔から頭蓋底に及ぶ疾患に対しても積極的に鼻内視鏡下に頭蓋底手術を合同で行っています。
当科における鼻副鼻腔内視鏡手術の特徴
1.最先端で安全な手術
(手術実績や内視鏡手術の詳しい内容については http://www.hosp.kyushu-u.ac.jp/endoscopic_surgery/doctor10.htmlを参照ください。)
図:ナビゲーションシステムを用いた内視鏡手術の風景
コンピューター上で切除ラインを確認しながら安全かつ確実な手術を行っています。
2.他科と連携し高度な手術にも対応
鼻から頭の中にまたがるような腫瘍の手術においては脳神経外科とまた鼻閉を伴うような外傷性斜鼻や鞍鼻の手術は形成外科と合同で行っています(外鼻形成は形成外科医が行い、鼻腔内は内視鏡を用いて耳鼻咽喉科医が整復)。
特に2018年からは脳神経外科と頭蓋底チームを立ち上げ鼻内視鏡下頭蓋底手術を積極的に行っています。2019年度には45例の手術を合同で施行しました。耳鼻咽喉科単科では手術が難しい症例でも当院では脳神経外科、形成外科などとチームを組んで治療を行っています。お困りの症例があればぜひ相談ください。
経鼻内視鏡頭蓋底手術の主な疾患
脳神経外科 | 下垂体腺腫、ラトケ嚢胞、脊索腫、髄膜腫 頭蓋咽頭腫など |
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耳鼻咽喉科 | 頭蓋底進展を伴う乳頭腫、副鼻腔囊胞、若年性血管線維腫、骨原性腫瘍、嗅神経芽細胞腫、一部の悪性腫瘍 など |
図:経鼻内視鏡頭蓋底手術の風景
耳鼻咽喉科医と脳外科外科医が同じ画面を見ながら手術を行い、そして脳神経外科のパートでは耳鼻科咽喉科医がスコーパーとして3ないしは4handsで手術を行っていきます。
3.好酸球性副鼻腔炎の診断、治療、研究に力を入れています。
難治性副鼻腔炎である好酸球性副鼻腔炎が難病指定されました。好酸球性副鼻腔炎の患者さんの多くは気管性喘息やアスピリン喘息を合併しており、鼻副鼻腔の内視鏡手術をしても3割から4割の方が再発すると言われています。また耳の中耳炎を合併される方もいます。残念ながら好酸球性副鼻腔炎は手術だけで病気が治るものではなく、鼻と気道は繋がっているので気管支喘息をコントロールし、手術をする場合も術後にできるだけ鼻の中のいい状態を保つためにアフターケアが必要になります。患者さん個々にあった治療を提案し、副鼻腔炎をできるだけコントロールし生活の質を落とさないように努めています。
4.その他:内視鏡下鼻副鼻腔手術のトラブルのため相談に来られる患者さんが増加しています。
以下相談内容になります。
- Q1 病院に行ったら即手術と言われた。本当に手術が必要ですか?
- Q2 普段は症状はないのだがたまたま風邪をひいて病院に行ったら手術と言われ手術を受けてしまった。手術の必要はあったのだろうか?
- Q3 手術しても鼻づまりが良くならない。もう一度詳しく検査して調べてほしい。
- Q4 手術前には症状はなかったのに手術後に鼻の痛みがでて良くならない。大丈夫でしょうか?
- Q5 手術をしても症状がよくならない。手術後に病院に行ったら好酸球性副鼻腔炎と言われた。好酸球性副鼻腔炎って何ですか?
手術でのトラブルを避けるため手術を勧められたら自分がどういう病気で、手術以外に選択肢はないのか、手術をするのであれば何を目的として手術をするのか、手術を行った後はどういう状態になるのか、手術後の治療についても担当医によく話を聞いてみて下さい。福岡市内には九州大学耳鼻咽喉科から鼻副鼻腔疾患・鼻アレルギー研究室グループの医師を派遣している病院施設があります(下記参照)。内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術の相談があればぜひ受診下さい。
*紹介状が必要な施設がありますので受診される際はそれぞれの医療機関に確認し受診されてください。担当医が不在の場合は他医師の対応となります。
図:考える人:手術をしたがよくならん?
鼻副鼻腔疾患・鼻アレルギー研究室メンバー
九州大学病院 |
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浜の町病院 |
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福岡山王病院 |
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大学院生 |
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教育について
鼻科手術指導医の育成
2020年1月より日本鼻科学会の鼻科手術認可研修施設に認定され、鼻科手術指導医を目指す耳鼻咽喉科専門医の指導を行っています。大学病院ですので鼻科手術の中でも難易度の高い手術を中心に行っています。2019年度は内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅴ型(拡大副鼻腔手術)30例、脳神経外科と合同で鼻内視鏡下頭蓋底手術を45例施行しています。当院で研修することで高度な鼻科手術、内視鏡下鼻副鼻腔手術が経験できます。
研究について
好酸球性副鼻腔炎に対する網羅的タンパク質、ゲノム解析およびそのデータベースの構築
好酸球性副鼻腔炎は、気管支喘息の患者さんに合併することが多く、鼻の中に多発性のポリープを伴う難治性の慢性副鼻腔炎です。2015年には指定難病の一つとなりました。好酸球性副鼻腔炎の中等症・重症の人は、全国で約2万人と言われさらに増加傾向にあります。なぜ好酸球性副鼻腔炎が増加しているのか、なぜ病気が発症するのか、その原因は解明されておらず治療法も確立していないのが現状です。そのため病気の原因究明、治療法を確立することが急務となっています。
好酸球性副鼻腔炎の患者さん由来の組織、血液から採取できる遺伝子を幅広く調べ、そのデータベースを構築し、さらに解析を進めることで副鼻腔炎の難治性の因子、再発予測マーカーの同定や新規治療薬の開発を目指していきます。
スギ花粉症に対する新規経口免疫寛容剤を用いた減感作治療の研究
図:経口免疫寛容剤を花粉が飛び始める1か月前から約2か月間服用することで花粉症を抑え、また抗アレルギー薬の服用回数を減らす効果があります。(2012年度臨床試験の結果より)
マウス花粉症モデルに対する新規免疫寛容剤を用いた経鼻免疫療法の花粉症抑制効果の検討
経口免疫療法は利便性のよい治療法ですが大量の抗原が必要となりコストがかかります。そこでワクチンのように経鼻的に新規免疫寛容剤を投与することで、より少量の抗原量で花粉症の症状を抑えることができるか花粉症のマウスモデルを使って抑制効果の検討を行っています。
経鼻投与では舌下免疫療法で使用する抗原量の数十分の1の量で免疫寛容を誘導することが可能と考えられており効果があればコストの削減が可能となります。
リゾチーム-多糖体複合体を用いた好酸球性副鼻腔炎に対する局所治療への試み
図:リゾリーム-キトサン複合体はMRSA,緑膿菌に対して優れた殺菌効果を示しており鼻副鼻腔の洗浄液として臨床応用を目指しています。(和興フィルタテクノロジー株式会社提供)